●日赤医療センターから東に向かい外苑西 通りを越えると、北条坂より北側に「笄（こうがい）」公園があり、寄り
道してみる。笄と言う名前は珍しいが公園に隣接する小学校も笄小学校で、由来その名を引き継いでいる。
｢笄（こうがい）｣という名の由来は、江戸幕府が開かれた際、このあたりに甲賀、伊賀組の屋敷として利用される
ことから生れていると言われているが、一方では近くにあった橋が「甲賀伊賀（こうがいが）橋」と呼ばれていたが
後に「笄橋」に変わったということからなど諸説ある。
ちなみに「笄」とは、髪を掻き揚げて髷を形作る装飾的な結髪用具。元は中国のもの。 頭が痒い時に髪型を崩さず
に掻いたり、女性の装身具としても使われた。 日本では、「三所物」と呼ばれる日本刀脇差）の付属品のひとつで、
刀と一緒に持ち歩く場合も多い。
公園は住宅とオフイス街の一角にある、六本木ヒルズや森タワーの高層の建物が見下ろしている。

●北条坂に坂下近く南側に大名北条家の下屋敷があったために、この名がついた。北条坂の右側に樹木が僅かに
屋敷跡の名残を留める。こんもりした緑に野鳥がさえずり、雰囲気のある場所ではあるが、絶え間なく車が脇近くをすり
抜けていく。切絵図上から北条遠江守、次いで遠山信濃守である。

●コースはテレビ朝日通りを北側に向かうが東側に隣接する南部美濃守の屋敷の有栖川宮公園が、篤姫・和宮に大変
関連深い場所から、ちょっと寄り道してみる。
◇有栖川親王、和宮婚約破棄に反幕急先鋒
当地は旧盛岡藩主南部美濃守の下屋敷にあったが、有栖川宮ご用地となった。
有栖川熾仁(たるひと)親王は嘉永4年（1851）、17歳の時に孝明天皇の皇妹・和宮親子内親王と婚約したが、公武合体
策の一環として和宮が徳川家茂と結婚することになり婚約は破棄された。
親王はこの事もあってか、皇室の身で明治新政府の成立に至るまで朝廷における反幕府・尊王攘夷派の急先鋒となる。
幕末の戊辰戦争では賊軍の首領とされた徳川慶喜が朝敵になったことを血縁者として恥じ自ら東征大総督を志願し、江
戸城の開城を果たす。明治になり西南戦争、日清戦争などの軍人の要職を生涯勤め、明治28年（1895年）病気で倒れ
61歳で薨去する。
◇有栖川家絶え高松宮家御用地
同家が絶え、大正2年(1913)高松宮御用地となった。昭和9年児童の自然教育に感心を持たれた高松宮殿下が有栖川威
仁親王の命日、1月5日にちなんで公園地として賜与され、同年11月有栖川宮記念公園として開園する。
鬱蒼とした樹木に包まれ、アップダウンの自然の地形をそのまま利用した丘陵や渓谷があり、底部は池など野鳥も飛び交い
変化に富んだ庭園になっている。樹木は梅、はなみずき、すいれんなどを初めとして四季おりおりの花も多く、秋にはかえで、
もみじなど紅葉を楽しむ事が出来る。
江戸城最期となった天璋院篤姫が大奥から立ち去ることになり江戸開城で終焉を迎える。一方ではその開城を迫った東征
軍側の大総督である有栖川家の縁の地が篤姫江戸城へ輿入れのルートに一角にあることに大変因縁めいたものを感じる。

□笄 (こうがい)公園

◇北条坂

2)笄(こうがい)公園〜南部美濃守(有栖川宮公園)

その公園の一角に熾仁親王の騎馬像がある。
熾仁親王の薨去後、大山巌・山県有朋・西郷従道などが親王の銅像を建立することを
提唱し、陸海軍人や一般から資金を募り東京・三宅坂の参謀本部の正門前に親王の
騎馬像が建立された。
除幕式には、董子妃や威仁親王夫妻、提唱者の元老たちに加え、因縁の深かった徳川
慶喜も縁者の一人として列席して祝辞を述べている。
新しい時代を迎えたとはいえ、慶喜を追放した敵将の一人の銅像建立に憚らず同席し、
どんな言葉を送ったのであろうか・・・。
篤姫も既に居なくなっているが慶喜を忌み嫌うのはこんなところかも知れない。
この像は太平洋戦争後、道路拡張工事に伴って現在地である東京都港区の有栖川宮記
念公園（威仁親王時代の御用地跡）に移設されている。
官軍は一度の戦闘もなく、無事に江戸城に到着し江戸城無血開城となった。
その折り、東征大総督として熾仁親王は死一等を命じられた徳川慶喜の助命嘆願は恭順を
条件に許した。

□南部美濃守

◇付近図(笄公園〜南部美濃守(有栖川宮公園))

◇北条坂頂上

◇熾仁親王の騎馬像

●同じく外苑西 通りに面する北条坂の篤姫の正規ルートに戻す。1車線の狭い一方通行の道であるが、車に取って
大事な要路なのかご覧の通り、車ラッシュの渦に、嫌でも入っていなければならない。

●北条坂を登りきる。正面右側のこんもりした緑が、南部美濃屋敷である。ここを左折すると切絵図上では三軒家町と
なり、現代ではテレビ朝日通りになる。